「〜出身」は現在形で表す?過去形で表す?
「現在形」は現在を表すわけではない?
「名称」に釣られて、本質を取り違えることがよくあります。
例えばこれは私の実体験ですが、その昔、外国人に道を聞かれたことがあり、本来であれば、「Keep going straight and turn right at the corner.(このまま真っ直ぐ進んで、角を右に曲がって下さい)」などと言えばいいところを、「Please keep going straight and please turn right at the corner.」と、「please」を挟んでしまいました。
もちろん間違いではないのですが、「please」をつけると「お願い」になり、「どうか真っ直ぐ進んで下さい、そしてお願いですから、右に曲がってもらえますか?」というニュアンスになってしまいます。
もちろん道を教えるのに、ここまでお願いベースになる必要は全くありません。
ではなぜ、私は「please」を付けてしまったのか。それは、動詞の原型から始まるものは「命令形」だと習ったからです。
つまり、「please」を付けなければ、「真っ直ぐ突き進め、そして角を右に曲がれ!」という命令形の口調になってしまうのかもしれない、と不安になってしまったわけです。
これは「命令形」という名称から、本質を見誤った事例の一つです。この場合、命令形であっても何ら失礼ではなく、むしろ「please」をつけると変なのです。
それと同様に、「現在形」という言葉も、見誤りやすい文法用語の一つです。
例えば、「I smoke.」という文章があったとしましょう。
「smoke」は「タバコを吸う」という意味の動詞ですが、この場合「現在形」であるため、「私はタバコを吸っている」と、今まさに吸っているような印象を受けますが、ニュアンスとしては「タバコを吸う習慣がある」です。
そのため、過去の段階でもちろんタバコを吸っていますし、今も辞めていませんし、これからも吸い続けるニュアンスがあります。
このように現在形は「ズッシリとした、過去・現在・未来」を含んだ時制になります。
He smokes.
(彼はタバコを吸います=吸う習慣があります)
もちろん、「今現在吸っている」ということを表現したいのであれば、「He’s smoking.」と現在進行形を使います。
ただ逆に言うと、「He’s smoking.」は今吸っているだけで、それが初めてかもしれませんし、これ一回限りかもしれません。つまり、喫煙する習慣があるかどうかは判断できないのです。
そしてこれと似た例で、現在形には「普遍の真理」という概念があります。いついかなる時も必ず起こる現象は「現在形」で表す、というものです。
The sun sets in the west.
(太陽は西に沈む)
ニュアンスは同じですね。過去も今も未来も、いついかなる時も、太陽は西に沈みます。
このようにいつも変わらない事象を伝えたい場合は、現在形の出番となります。
最後にクイズの答えですが、こうなります。
なぜ現在形を使うのかというと、「出身」というものは人生のどこをとっても変わらない事実だから、です。時に左右されない、ズッシリとした感覚。
これをもしも過去形の「came」で表現してしまうと、「今、東京からやってきたんだ」のニュアンスとなり、「ちょっと前に東京にいたこと」を表してしまいます。
そのため、出身を尋ねるのであれば、「Where did you come from?」ではなく、「Where do you come from?」と聞きましょう。
現在形の例文を幾つか紹介します。
- He rarely gets up before noon.
(彼は昼前に起きることはほとんどない) - The earth turns round the sun.
(地球は太陽の周りを回っている) - The road runs parallel with the railway.
(その道は線路と並行して走っている)
以上、「現在形」のニュアンスについて、でした。