「have to …」と助動詞「must」の違い
「must」は「抗えない圧力」
よく学校で「have to=must」と習い、書き換え問題をさせられた方も多いと思いますが、もちろんそれは「乱暴な教え方」であり、そう覚えてしまった方は後で「やり直し」が必要になってきます。
まず、「have to …」は「(これから)…することを持っている」を表し、ニュアンスとしては、「本当はやりたくないけど、仕方なく、渋々…する」意味です。
I have to finish my homework by 5 pm.
(5時までに宿題を終わらせなきゃいけない)
- I have to leave early today.
(今日は早く出ないといけない) - We have to work overtime again.
(また残業しなきゃ) - You have to change your attitude.
(あなたは態度を変えないとダメよ)
一方、「must」は「抗えない圧力」が掛かっている時に使う助動詞です。
You must follow the rules.
(ルールに従わないといけません)
「have to …」が「…しなくてはいけない」という渋々なニュアンスに対し、「must」は「絶対にそうしないといけない、そう決められている」という強制力が掛かっています。
そのため、「宿題をしなくちゃ、皿を洗わなくちゃ、買い物に行かなくちゃ」という感覚は「have to …」で表します。
そのため、ネイティブが成長過程において、初めに習うのは「must」ではなく、「have to …」になります。親から「…しなきゃダメよ」と習うものは、全てこちらの感覚だからです。
一方、「must」は堅い表現となり、形式張っているため、日常会話には合いません。合うのはビジネスの現場やルールの説明、格言などです。
- We must correct these problems soon or the project will
(これらの問題をすぐに直さないと、計画は失敗するだろう) - All passengers must wear seat belts.
(乗客の方は全員、シートベルトをして下さい) - Everyone must die.
(人は皆、死ななければならぬ)
「have to …」に比べて、やはり「must」の方が「堅さ」がありますよね。
ちなみに「have to …」は日常会話でよく使うことから、よくくだけた形で使われます。それが「I have(I’ve) got to …」や「I gotta …」です。
Sorry, I’ve got to go.
(ごめん、もう行かなきゃ)
(=Sorry, I have to go.)
ドラマなどを見ていても、よく出てきますよね。それだけ使われているからこそ、形も崩れるわけです。
「have to …」と「must」の否定形
ちなみに、「have to …」と「must」のニュアンスが違うことが分かるのは、二つが「否定形」になった時です。
まず、「have to …」の否定形、つまり「don’t have to …」になった時は、「…しなくてはいけない」から「…しなくてもいい」のニュアンスになります。
I’m really glad I don’t have to go back there again.
(そこに戻る必要がないから、とても嬉しい)
「行く必要があった」のがなくなったわけですから、身軽になった感じですね。やらなくてもよくなった。
- You don’t have to knock-just walk in.
(ノックしなくてもいいよ。そのまま入ってOK) - Phew! I’m so glad I don’t have to give that speech.
(ふー。スピーチをしなくていいから、ほっとしたよ)
一方、「must」の否定形、つまり「must not(mustn’t)」となった時は、「…してはいけない」と「禁止の圧力」が掛かります。
You mustn’t judge people by their exteriors.
(人を外見で判断してはいけない)
- Children must not talk to strangers.
(子供は絶対に見知らぬ人に話しかけてはいけない) - You mustn’t waste a grain of rice.
(米一粒も無駄にしてはいけない)
このように、「have to …」や「must」を日本語に訳す場合は、そこまでニュアンスを考える必要はありませんが、自分で英語を組み立てる場合、受け取るのは英語ネイティブだったりします。
その際、ニュアンスがズレていると、やはり違和感を覚えるので、「英語を使ってコミュニケーションをしていく」というのが英語の最終ゴールなのであれば、「have to … = must」という覚え方をしたり、機械的に書き換える問題をしていると、将来やり直すことになるので、正しいニュアンスでインプットしておきましょう。
以上、「have to …」と助動詞「must」の違いについて、でした。