第1部4章.「英語を話せるようになりたい。だって、カッコいいもの。素敵だもの」
4「英語を話せるようになりたい。だって、カッコいいもの。敵だもの」
もちろん、英会話スクールは他にも沢山ある。単にあのスクールが私に合わなかっただけなのかもしれない。
私の英語力を開花させてくれる、素晴らしいネイティブ講師やスクールがあるはずだ。私はその後、体験授業を受け続けた。短期間だが、通ったスクールもいくつかあった。
しかし、私はどこに通っても、全く同じ問題に出くわした。それは、『上達を実感しない』ということだ。
確かにネイティブとのレッスンは為にはなる。英語に慣れていくような気もした。
しかし、やはり私の思い描いていた『ペラペラ』には程遠く、『国内にいては話せるようにはならない』という気持ちの落ち込みが定期的に、まるでつむじ風の如く、丘の上からふっと襲ってきてはものすごい勢いで私のやる気や自信を、根っこから吹き飛ばしていくのだった。
こうして私は留学を真剣に考え始めたのだが、結局母には相談すらできなかった。
スクールの失敗もあるし、何より母を家で一人にさせたくなかったからだ。
また、留学したところで英語がペラペラになる保証が一つもない、ということを周りからも聞いていた。
結果を出すのであれば最低でも1年は必要で、しかもその場合は日本人が周りに一人もおらず、日常生活から学業まで、すべてのやり取りを英語でこなさなくてはならないような厳しい環境に身を置かないといけない、と学科の教授にもアドバイスを受けた。
実際、留学をして失敗した人が周りにも沢山いた。そんな人たちを見ると、スクールの二の舞になりそうで、私は怖くて留学など考えられなくなってしまった。
それから私はハウツー本から表現集まで、何十冊もの市販のスピーキング教材を買い続けてきた。しかし、どれを使っても『自然と英語が口から飛び出す』ことなどなかった。
また、それと同時にリスニング教材も沢山試した。というのも、大学生の時にTOEICで930点も取り(990点満点)、英検だって準1級まで取得したにもかかわらず、ネイティブ同士のナチュラルな会話になると、絶望的に聞き取れなくなってしまうからだ。
もちろん、洋画や海外ドラマも字幕なしでは全く理解できない。恐らく資格試験と違って、対策が取れないからだろう。自分でも張りぼてのリスニング能力だと思う。
『発音がよくなれば、リスニング力も上がる』という理論から、発音教材だって数多く試した。しかし残念ながら、私の耳に『英語が飛び込んでくる』ような奇跡体験は、やはり一度として起きた試しがなかった。
こうして私は英語を話せないまま、教師になってしまった。それでも学校でALTと毎日話していれば、いつかはペラペラになれるとも考えてはいたが、彼らは授業が終わるとすぐに帰ってしまい、驚くほど接点がなかった。結局最後の望みも潰えてしまった。
一体私はどこでどうすればよかったのだろう。思い描いていたのは、リスニングやスピーキングもネイティブ並の英語教師だった。
こんな教師になったことを、父は今、天国からどう思っているのだろう。きっとガッカリしていると思う。私が再び英会話スクールをズル休みしていたことを知った時の母と同じ顔だ。
せめて教師になるまでは、父に生きていて欲しかった。そうしたら、今まで怠惰だった私を叱り飛ばしてくれていたはずだ。
英語を話せるようになりたい。だって、カッコいいもの。素敵だもの。カッコよく、素敵になりたい。生徒から憧れられるような英語教師になりたい。
この生き方を選んで正解だった、と父に胸を張って言いたい。そしてまた褒められたい。
年を重ねたって、肌の張りを失ったってその気持ちは全く色褪せない。28歳になっても、私は夢を見続けている。
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