イメージを通し、世界を「英語のまま」切り取る
新作「もしなる2」連載中!

「もしなる2」第4部6章.「言葉とイメージ」

6、「言葉とイメージ」

「お久しぶりですね」

教室を訪ねると、中には有紀さんとアップルしかいなかった。

「あれ? 生徒さんは?」

「今日は休みなんですよ」

「えっ?」

「夏季休暇です。ただ、ちょうど準備しないといけないことがあって」

「あっ、そう・・・なんですね、すみません。じゃあ、帰らないと」

「あ、別にいいんですよ。それに、できれば僕と一対一で話したかったんじゃないですか?」

「! ・・・」

やはり、見抜かれている。そう、できればこの件について、邪魔されることなく、最後まで聞きたかったのだ。であれば、今日が絶好のチャンスなのかもしれない。

有紀さんは犬小屋の前にアップルを座らせ、受付席に私を案内した。

「もしかして、また葵ちゃんに会ったんですか?」

「! ・・・え、な、、、何で分かったんですか? 超能力者ですか、有紀さん」

「いいえ、今のは単にヤマを張っただけですよ(笑)ただ、前回も会ってからこちらにいらっしゃいましたからね。今回もそのパターンなのかな、と」

さすが有紀さんだ。勘の冴えが鋭すぎる。

すると、ちょうどその時だった。窓越しに夕空がピカッと、光った。

「あっ、雷ですね」

「えっ! ・・・今日って、雨が降るんですか?」

しまった、天気予報を全く見てきていなかった。

「大丈夫ですよ、置き傘なら何本もあるんで」

「あ・・・す、すみません」

その時、もう一度雷が光り、有紀さんの横顔を照らした。あっ、そう言えば・・・

ー「・・・義眼なの、有紀くん、左目が。視力を、失ったんだ」

そう、藤川さんから以前聞かされた、衝撃的な事実。

私はジロジロと、有紀さんの左目を見た。見た目は全然、分からない。至って普通の目だ。

「あれ? 誰かに聞いたんですか? 僕の左目のこと」

「! ・・・は、はい・・・その、藤川さんと以前、この近くであって・・・」

本当に鋭い。視線だけで、ここまで気付かれるとは。

「そうですか・・・そっか、藤川さんかぁ・・・」

「あっ、その! 言わないで下さい、藤川さんには」

そう、それが伝わると、藤川さんに申し訳ない。

「もちろん、大丈夫ですよ(笑)ちなみに、藤川さんは僕が視力を失った理由を言っていましたか?」

「あ、いえ。それは、聞いていません。ただ、その・・・『味方になってあげて』と言っていました」

それを聞くと、有紀さんはクスッと笑った。寂しげな、不思議な笑みだった。

「葵ちゃんは元気でしたか?」

「あ、はい」

そして私はそれから、ここに来るまで何があったのかを、有紀さんに順を追って説明した。

すると有紀さんはクスクスと笑って、

「そっか、やっぱり桜木さんが、言っていただけありますね。葵ちゃんが、一番、物事の飲み込みが速い生徒さんだったって」

「その、・・・桜木先生って、どんな方だったんですか?」

「若松さんによく似ていますよ」

「え!? 私に、ですか?」

「はい。生徒さん想いで、そのためには上や周りに抗ってでも、何とか変えたいという気持ちがあるところは特に」

「・・・」

「結局なんですが、今の英語教育では、どれだけ先延ばししても延長しても、『話せる』は無理なんです。『話す』というのは、今までどれだけ『音の経験を積んできたか』の話なので。時間を伸ばすんじゃなくて、中身を劇的に変えないと

「中身?」

「知っている、分かる、の裏に『もっと太い導線』があるんです。そして、それが『話す』のメインです」

もっと太い導線?

「例えば若松さん、1から5まで数えてもらってもいいですか?」

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(次回「7、稲妻と雷鳴に続く)

「英語」という「教科」を、「言葉」に変える


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