英語を日本語に切り替えず、そのまま理解する
金沢優、3年ぶりの新作「もしなる2」連載中!

「もしなる2」第2部6章.今後、果てしなく続いていく英語人生

6、今後、果てしなく続いていく英語人生

「What is your question?」

私は慣れない英語で、そう返した。子供が英語で聞いてくる以上、私だって英語で返さないと。塾で英語を教えている以上、私にだって「先生」としてのプライドがある。

「What’s this? Do you know what this word means?」

そう言って女の子は、持っていた児童書のある箇所を指差した。

ただその瞬間、私はゾクリとした。そう、今、この子は「間接疑問文」を口にしたのだ。確かそれを習うのは、中学三年生だ。それをなぜ今、この子は口にできるのだろう。私でさえ、口にすると、言い間違えてしまうのに。

私はショックを隠しつつ、その本を覗き込んだ。するとその本は所々に挿絵が入っていたが、そのページだけ、ちょうど文章のみで、その単語が何なのか、想像できなかったのだろう。

「どの単語だ?」

松尾さんも一緒になって覗き込んで、その箇所を見た。すると、そこには「ruler」と書かれてあった。

確か「ruler」の日本語訳は「定規」である。また、その他にも確か、「支配者」の意味もあったはずだ。学生時代、単語帳で覚えたことがある。

私はその文章を読み、それが「定規」であることを確認し、そう伝えようと思ったら、

「『ruler』の意味は定規だ」

と、松尾さんの方が先に答えた。

「ジョウギ?」

「ああ、『ruler』は『定規』だ。そして、その他にも『支配者』って意味もあるぞ」

「シハイシャ?」

「ああ。でも、あんまりテストには出ないかな」

「・・・ふーん」

女の子は何だか腑に落ちていない感じだった。「欲しかったのは、そんな答えじゃなかった」と、言いたげに見えた。

しかし、次の瞬間だ。

「余計な真似をするな!」

教室内に、怒号が響き渡り、私たちはビクリ、となった。

そしてその声の主は、教室の奥にいた吉原さんだった。私たちの方を鋭い目つきで睨んでいて、思わず私は凍りつきそうになった。

「よ、余計な真似?」

「てめえ、今、真希ちゃんに何をしたか、分かってんのか?」

「き、聞いてきたから、答えただけだろう?」

辿々しく答えた松尾さんだったが、

「今、真希ちゃんは『What does this word mean?』と聞いたんだ。『How can I translate this word in Japanese?』と聞いたんじゃねえ!」

「何?」

『訳』と『理解』は違うぞ! てめえ、そんなことも分かっていねえくせに、勝手にペチャクチャペチャクチャ得意げに子供に英語を教えてんじゃねえぞ! 謝れ、真希ちゃんに!」

ここから先は、有料になります。「note」からお読み下さい。今後、値上げもする予定です。サポート感覚で、ご購入頂けると幸いです。

(次回「7、英語を英語で理解し、英語で考える方法」に続く)

日本人が学んできた「英語」とは何だったのか?


完全版・増刷版】は文庫本のみです。
待望の重版出来!!全国発売スタートしました!!