英語を日本語に切り替えず、英語のまま理解する
「話せる」に向けた英語の学び方

日本人の英会話の成功率について

国内で、どれだけの日本人が英会話で成功するか

さて、以前、フラッシュカードの紹介をしました。それは、「絵を見てすぐに、それに当たる英語を口から出す」という練習でした。

そしてそれは私が昔、「英語で考える」というコンセプトのスクールにいた時の、一番初めのカリキュラムでもありました。

当時の学院長は、私にこう言ったのです。

「フラッシュカードはね、言葉の基本なんだよ」

正直な話、当時の私は、ただ「ふーん」と聞いていました。絵を見て、すぐに言う練習が何になるのだろう。

であれば、まだ「フレーズ集を覚えた方が実用的じゃないのか」、と。

さて、それから5年、私はそのスクールを含め、3つの英会話スクールでスタッフとして働きました。小さいところもあれば、誰もが知っている大手のスクールもあります。

沢山の生徒さんを見てきました。数で言えば、1000人は越えているかもしれません。

さて、その中で、英語が満足に話せるようになった方を、私はどれだけ把握できているでしょうか?

その答えは、

たった、「一人」でした。

びっくりするかもしれませんが、やはりこれが実情なのです。残りの方は、何も変わらないか、ほぼ脱落されていきました。いつの間にか、消えていたのです。

そう、それくらい、日本人にとって「英会話」とはハードルが高いのです。

未だに「話せる」ようになるためだけに、海を渡っている方が多いのは、こういう背景があります。国内で話せるようになるのは、やはり厳しい。

そもそもですが、「言葉」とは毎日使い続けることで、育まれ、洗練されていくものです。

それなのに、週に1〜2回、60分ほどネイティブ講師と楽しく話しても、何の変化があるでしょうか。干からびた地に、水を1滴垂らす程度です。

そして、そのレッスンを受けたとしても、日本語訳して終わっているだけですから、それは学校の授業と何も変わりません。話者がネイティブに変わっただけ。問題の根は、もっと深いところにあります。

そのため、国内で英語を話せるようになるためには、毎日しっかりと課題を出し、「なぜ日本人が英語を話せないのか」を見極めた人がマネジメントをされているスクールでないと、結果は出ようもないでしょう。毎日水滴を垂らし続けなければ、花は咲ようもない。

また、それ以外だとしたら、学び方を変えて、毎日英語を話す機会があるオンライン英会話を活用していった方がいいと、私は思います。

いずれにしろ、「学び方は大事」です。国内にいる以上、普通にやったら失敗します。それは、今まで沢山の失敗者を見てきたから、そう言えるのです。

英語が話せるようになった、Hさんの話

さて、ここで上に書いた、話せるようになった唯一の生徒さんのお話をします。その方は、「英語で考える」というコンセプトのスクールに在籍されていた生徒さんでした。

名前はHさんと言います。そして、その昔、英語を勉強されていたので、文法の基礎はある程度分かっていたようです。

そしていつも学校にいらっしゃった時、Hさんはいつもフラッシュカードから始めるのが決まりでした。

“pencil,pencil,pencil,pencil….”

“dog,dog,dog,dog….”


“broom,broom,broom,broom….”

カードには、スペルは書いてありませんでした。ただのイラストだけです。

そしてHさんは、自分の席に座り、そのカードを見ながら、一人でポンポンとその英語のカードを、繰り返し繰り返し読み上げていたのです。それはまるで、「英語の音を頭に植え付けている」という感じでした。

スピードが速かったのを覚えています。絵と口が揃っていました。見たら、それに当たる英語がポロっと出ていました。

そう、『日本語から英語に切り替えている時間が全くなかった』のです。「切り替えが速い」のではなく、もう「切り替え作業自体が、ない」のです。

多くの日本人に鉛筆を見せて「これ何?」と聞けば、「鉛筆?pencilじゃん」と答えるのに対し、Hさんなら「pencilでしょ。日本語だったら、何て言うんだったっけ?」と返す感じです。ここの回線がスパンと切れていました。

そして当時、そこに入社したばかりで、あまり「英語で考える」のコンセプトが分かっていなかった私は、不思議に思って、こう尋ねたのです。

「Hさん、もう英語はペラペラなんですから、何でいつまでもフラッシュカードをされるんですか。もう知っているじゃないですか、pencilだとかdogだとかbroomだとか」

そして、私はその次の、Hさんの返事を生涯忘れることはないと思います。

Hさんは私に、こう返したのです。

「あのね、『知っている』と『口にすっとできる』は違うのよ。私たちが日本語を自由に話せているのは、毎日それを見て、言い続けてきたからなの。だから文章でもすっとそれが出るの。だから英語でもそれをやんなきゃ。これは私の英語のね、基本なの」

Hさんの顔は正直、忘れてしまいましたが、その言葉だけが私に残り続けています。

それくらい、私の今までの「英語の価値観」を揺るがしたのです。

「訳せる」と「話せる」は別の作業だ、と。

なぜ、私たちは電車を見て、すぐに「電車」と口にできるのか

さて、日本語で「今、電車に乗るんだ」という文章がスラリと言えない人など、日本人にはいないでしょう。

なぜでしょうか。

それは、『電車』という言葉を知り、その上で、人生の中で何十万回以上もその言葉を使い続けてきたという「経験」があるから、何不自由なく、それを文章に組み込めるのではないでしょうか。

私たちは、「train」の日本語訳は知っています。ただ、「train」と口にしてきた経験はどれだけあるでしょうか?

恐らく、「数えられるくらい」です。

では、「train」と口にするのはいつでしょうか。

それが、英会話スクールで、ネイティブと一緒にレッスンをした時の、週1〜2回のレベルなのです。

それ以外は英語を口にする必要性など、国内にはありません。日本語だけで生活できるからです。

もちろん英語圏では毎日、電車を使う方は「train」を言ってきているはずです。なぜなら生活しているのですから、当然のことです。それが言えなければ、生活に支障を来たします。

もちろん、彼らは心の中で考えている時も「train」と言い続けています。それこそ、何十万回も「train」を、言葉として使い続けてきている「経験」があります。

だから電車に乗ったら、「I got on the train.」とすっと出る。思い出しても、言える。相手に伝えられる。当たり前ですが、日本語から切り替えていません。その「もの」と、「口」が結びついている。

言葉とは、何度も口にして、「手垢」をつけないといけない。

そう、結局Hさんは、日本にいながら、その「経験」を積むために、絵を見て、「train」と言う回数を増やしていたのです。

そして回数が増えるとともに、速度も速くなっていきます。自分の言葉となっていく。それが、彼女の流暢な英語にも繋がっていったのでしょう。

さて、ふとここで、日本人の英語学習を見ます。

そう、ほとんどの方がスペルだけを見て、黙々と日本語訳を出す練習をしています。口なんて一つも動かさない。その必要がない。

当たり前です。筆記試験に、英語をスッと口に出すスキルなど要らないからです。「英語の単語を日本語に高速に訳すスキル」があれば、十分。

人間、無駄な作業はしません。

しかし、それでその英語が自分の言葉になっていると勘違いし、そのままスクールに通い、ネイティブを前に思うようにその言葉が出ず、諦めてしまう方がどれだけ多いことか。

「知っているのに、訳せるのに」と嘆く。

いえ、違うのです。それは「話せる」とは全く別のスキルです。「文字を訳せる」です。全くの「別の道」です。

これに気付かず、さらに違う表現集などに手を出す。難しい単語やスラングなどを覚える。段々短いものだけになっていく。そしてもちろん、それも眺めて、訳して終わっている。

本棚には、表現集が溜まる一方。そして、いろんなメソッドに手を出し、結局、訳して終わっている。負のスパイラルが、一向に止まらない。

ここでもう一度、学院長の言葉をお伝えします。

「フラッシュカードはね、言葉の基本なんだよ」

この言葉は、やはり正しかった。

英語を何度も何度も口にして、「経験」しよう

さて、フラッシュカードを使われている方は、いかがでしょうか。「英語を口にする」というのは運動と同じだと理解されたかと思います。聴き流していたら英語が自然と口から出てくるなんて、とんでもない。

正解は、意識的に何度でも口に出さなければ、自然に出てこようもない、です。

そして、どんな練習にしろ、そこには必ず「意図」というものがあります。なぜこれをしないといけないのか。これをしたら、どうなるのか。それは、スポーツと一緒です。

素振りを1000回したらどうなるか、筋トレをしたらどうなるか。ただ言わされてやっている選手と、練習の意図が理解できている選手では、仕上がりが違います。

それは、練習を「活かす」意識があるからです。だから自分なりの工夫も加え、モチベーションも保てる。

だから、「意図」も分からずに、ただTOEICの勉強をしているだけだとか、レッスンを受けるだけだとか、音読するだけだとかをしても、それが何になるかを分かっていなければ、結局「自分、これをしてどうなるんだろう?」になっていくはずです。そのうち、やめるのは目に見えています。

先ほども書きましたが、国内で成功させるには、「工夫」が必要です。普通の練習では、失敗する確率が高いです。

環境を揃えるだけとか、聞き流すだけ、とか。「○○だけ」という言葉は、疑った方がいいです。

そしてこのフラッシュカードの練習は、日本語を抜き、何度もそこに英語を植え付ける練習です。やればやるほど、いいはずです。やればやるほど、うまくなります。

知っている、というレベルの話ではないのです。何度口にしてきたか、の話です。「英語を口にした経験」を積む練習です。音読がいいのも、そういう意味があります。


こちらの卓球の水谷隼選手が言っていることは、英語にも当てはまると思います。語学に近道などなく、あったとしてもこれです。泥臭い、素振りの作業です。

何度もいらっしゃって、繰り返し繰り返し、英語を口にして、Hさんのように近づいていきましょう。

日本人が学んできた「英語」とは何だったのか?


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